2019年12月25日
日本自治委員会事務総局情報局
局長 上原 瑞貴
1.概要
当自治委員会が東京都教育委員会に対して発出していた、とうきょうトリエンナーレ事業における東京都立上野高等学校、東京都立白鷗高等学校、東京都立国立高等学校の3校当局(以下「当該3校当局」)による妨害行為およびその他不適切な行為に関する抗議文に関して、東京都教育委員会から12月20日付で回答文書が送られてきました。
しかし、回答の内容は、当該3校当局による宣伝妨害およびその他不適切な行為について、具体的かつ合理的な根拠も示さずに「生徒の登下校中の安全面を確保する観点から行った」とし、当該3校当局の非を全く認めないものでした。
また、当自治委員会は宣伝妨害およびその他不適切な行為について、東京都教育委員会に対して法的根拠、法的な適切性、合理的かつ正当と考えているのかどうかの説明を求めましたが、これらに関する返答は一切ありませんでした。
さらに、回答までの期間も、約1ヶ月余〜約2ヶ月半と、甚だしく遅いものでした。
東京都教育委員会からの回答の詳細は次項で示す通りです。
2.詳細事項
当自治委員会は、とうきょうトリエンナーレ事業として各都立学校の校門前で宣伝活動を行っていますが、この際、東京都立上野高等学校、東京都立白鷗高等学校、東京都立国立高等学校、東京都立三田高等学校の4校当局が宣伝活動の妨害を行いました。
このうち、東京都立上野高等学校、東京都立白鷗高等学校、東京都立国立高等学校の3校当局による妨害は極めて悪質なものであったため、日本自治委員会では、東京都教育委員会に対して抗議文を発出し、教育長名による謝罪と再発防止を求めるとともに、次の各号に掲げる事項等の説明を求めました。
(1) どのような法的根拠により行ったのか
(2) 法的に適切な職務執行であったか
(3) 表現活動の自由を侵害するような対応が合理的かつ正当であると考えているのか
上述の当該3校当局による妨害の詳細ならびに東京都教育委員会に対する抗議文のリンクは以下の通りです。
○東京都立上野高等学校
・教職員が数人がかりで活動員を取り囲み、「学校を批判しているようで良くない」という理由で宣伝活動をやめるよう求めた。活動員が事業内容及び目的について再三再四説明するも教職員は納得せず、宣伝活動を妨害し続けた。(発表)
・東京都教育委員会に対する抗議文:【抗議文】東京都立上野高等学校当局の活動妨害を受けた抗議(都教委宛)
○東京都立白鷗高等学校
・善本久子校長が、活動員が配布していたフライヤーの内容について「教育上問題がある」「生徒の健全な育成に良くない」旨を発言し、宣伝活動をやめるよう求めた。また、フライヤーの内容について「虚偽」呼ばわりを繰り返した。なお、フライヤーの内容は大手メディアの報道や都議会議事録に基づくものであり、真実性は十分立証できるものである。活動員は校長の要求を拒否するも、校長は納得せず、長時間にわたり活動員に話しかけ続けた。また、校長が活動員の手首に触れた。その他、一般教職員が活動員を怒鳴りつけたり、有形力の行使を行ったりした。(発表)
○東京都立国立高等学校
・佐藤文泰校長が活動員に対し、「登校する生徒の邪魔になっている」という理由で立ち退くように求め、その際に北澤良浩副校長が活動員に対し有形力を行使した。この行為に抗議した活動員に対し、校長は「邪魔になっているから退いてくれ」と一方的に求め、活動員が抗議文の受け取りと謝罪を求めても無視した。(発表)
・東京都教育委員会に対する抗議文:【抗議文】東京都立国立高等学校当局の活動妨害を受けた抗議(都教委宛)
これに関し、東京都教育委員会は先述の回答文書にて、以下のように返答しました。この文書が送付されたのは、当自治委員会の文書発出から約1ヶ月余〜約2ヶ月半と、甚だしく遅いものでした。
(東京都立上野高等学校に対する抗議文および東京都立白鷗高等学校に対する1回目の抗議文について)
当該校における対応については、生徒の登下校中の安全面を確保する観点から、校長が自らの権限と責任において行ったものです。
都教育委員会は、都立高校の生徒が安心・安全に学校生活を送ることができるよう、学校に対して適切な対処に向けた支援を引き続き行っていきます。
なお、個別の教職員の人事に関する事項については、お答えできません。
(東京都立白鷗高等学校に対する2回目の抗議文および東京都立国立高等学校に対する抗議文について)
当該校における対応については、生徒の登下校中の安全面を確保する観点から、校長が自らの権限と責任において行ったものです。
都教育委員会は、都立高校の生徒が安心・安全に学校生活を送ることができるよう、学校に対して適切な対処に向けた支援を引き続き行っていきます。
3.日本自治委員会の見解
(1) 回答文書1文目について
東京都教育委員会は、上述の通り、当該3校当局による宣伝活動の妨害について「生徒の登下校中の安全面を確保する観点から、校長が自らの権限と責任において行ったものです。」と返答しました。しかし、当自治委員会は、宣伝活動中、生徒の登下校中の安全を脅かすような行為を一切しておらず、この返答は的外れかつ不適当です。
仮に、当該3校当局が、生徒の登下校中の安全面を確保する観点から宣伝活動の妨害を行ったのであれば、東京都教育委員会および当該3校当局は、当自治委員会の宣伝活動が生徒の登下校中の安全を脅かしたと言える具体的かつ合理的な根拠について説明すべきです。
しかし、東京都教育委員会は、上述の回答文書において、当自治委員会の宣伝活動が生徒の登下校中の安全を脅かしたと言える具体的かつ合理的な根拠についての説明を一切行っていません。これは公務所の回答として極めて不適切であり、当自治委員会の宣伝活動を生徒の登下校中の安全を脅かすものだと根拠もなく決めつける侮辱を行っていると言えます。
(2) 回答文書2文目について
また、東京都教育委員会は、回答文書の中で「都教育委員会は、学校に対して適切な対処に向けた支援を引き続き行っていきます」と述べています。
しかし、当該3校当局による宣伝活動の妨害は、憲法21条で保障されている表現の自由の侵害であり、違憲行為です。また、この行いは、憲法99条が定める公務員の憲法擁護義務にも反します。さらに、当該3校当局はこれ以外にも、有形力の行使、取り囲み、怒鳴りつけ、氏名・職名を名乗ることの拒否等、違法行為およびその他不適切な行為を度々行っています。
東京都教育委員会は、「学校に対して適切な対処に向けた支援を行っていく」と主張するのであれば、上述の違憲行為、有形力の行使、その他不適切な行為について、当自治委員会に謝罪し、当該3校当局に対して再発防止のための指導を行うべきです。しかし、東京都教育委員会は回答文書中で当自治委員会に対して一切謝罪しておらず、再発防止のための指導を行う確約も一切していません。
したがって、東京都教育委員会によるこの返答は、上述の違法・違憲行為およびその他不適切な行為を容認するものであり、日本国憲法に反する、公務所として極めて不適切な行いです。日本自治委員会としては東京都教育委員会のこのような姿勢は到底看過できるものではありません。
(3) 当自治委員会が求めた回答の不存在について
当自治委員会は、抗議文の中で、東京都教育委員会に対し、宣伝活動の妨害について、次の各号に掲げる事項等を説明するよう求めていました。
(ア) どのような法的根拠により行ったのか
(イ) 法的に適切な職務執行であったか
(ウ) 表現の自由を侵害するような対応が合理的かつ正当であると考えているのか
しかし、回答文書の中にこれらに対する返答は一切存在しませんでした。
妨害を行った法的根拠および法的な適切性を説明しないことは、法に基づいて公務を執行すべき公務所としての説明責任を放棄するものです。
また、当自治委員会の「表現の自由を侵害するような対応が合理的かつ正当であると考えているのか」という問いについて、これを説明しなかったことは、都立学校の行った違憲行為に対する説明責任を放棄するものです。
(4) 結論
以上の理由から、今回の東京都教育委員会の返答は厳しい非難に値するものです。
当自治委員会は、東京都教育委員会が、都立学校の違法・違憲行為およびその他不適切な行為を容認し、説明責任すら果たさない姿勢について、激烈なる憤りを表明するとともに、是正を求めるものであります。
以上
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